「パラダイス鎖国〜忘れられた大国・日本〜」

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)

Amazonのリコメンドエンジンのおかげで見つけたこの本。

パラダイス鎖国

「言い得て妙」とはこういう言葉だなと久しぶりに思いました。


ここ数年、私が感じてた日本の状況ってこれだったんだ〜!
とすごく共感しました。


しかも筆者の海部さんは一橋社会学部の先輩という事に運命感じちゃいました。


一橋の社学卒業生には、商・経・法とは一味違う
海部さんの言葉でいう「プチ変人」がちらほら居る。


筆者がアメリカと日本を行き来しながら感じた事を、
私はアジアと日本を行き来しながら感じてきました。


私の場合、
日本は内需志向が強くて、世界やアジアからどんどん孤立してどうなっちゃうんだろう?
韓国や中国の同世代と比べて、日本のハングリー精神の無さはなんなんだろう?
私達の世代が社会の中心になる頃(あと20〜30年後)に日本は世界でどんな立場にいるのだろう?
という悶々とした問いから始まったと思う。


私の周りにはたくさんの韓国人の友人・知人がいるけれど、
彼らは「パラダイス鎖国」な日本人とは対照的で、
エリートほど「海外(日本やアメリカ)で暮らしたい」と考えている。


韓国のような内需の小さい国では過当競争が激しく、
為にならない過度な教育環境、
決められた人生成功パターン、
画一的な価値観など、
エリートの彼らが自国を見る目は実に厳しい。


日本は国内市場が大きくてうらやましい、とよく言われる。


そして、優秀な人ほど韓国を離れていく。


韓国は愛国心が強いと思いがちだが、彼ら韓国エリートの行動を見ると、
国籍に囚われずに自分の暮らしやすい国で仕事を探して住もうとする傾向は非常に強い。


また、私の中国語の先生(東工大の院生)は、
高校のクラスメートのほとんどが今は日本で学んでいて、
(クラスで2名は中国の大学、2名がアメリカの大学、他は全員日本の大学に進学したそうな)
先日、東大・東工大・一橋にいる10数名で同窓会をしたと言ってた。


日本で就職したら、教授を狙ったら、何歳でいくら年俸がもらえるのか、
そんな話題になったらしい。


建築を専攻している私の先生は、
すぐに中国に戻った方が日本で新卒として働くよりも断然良い給与&待遇で働けるけれど、
数年日本で働いて日本の大企業のノウハウを習得してから帰国した方が、
将来的には自分の付加価値が上がる、今そう考えているそうだ。


一人っ子の彼らは、家族の期待を一身に背負って、
単に自分の幸せだけではなく(未来の自分のベイビーも含めた)家族全員の幸せのために、
いま世界のどこで何を学び、働く事が良いか考えている。


そんな韓国人や中国人の同世代と会った後に、
日本の大企業へと迷わず就職した友人達に会うと、価値観のギャップに驚く。


確かに日本は住みやすい。
質の高いサービスや商品に溢れている。
それなりに会社勤めをすれば、それなりにお金がもらえて、安定した幸せな家庭が築ける。


円高やバブルで海外旅行や夜遊びをしまくった上の世代たちに比べて、
不況だ不景気だと言われ続けた10年で大きくなった私達の世代は、現状維持でも十分幸せなのかもしれない。


それでもこのパラダイスの状況に甘んじることなく、考えていかなければ
私達の子供の世代には今の韓国のように優秀な人材ほど海外へという構図にならざる得ないに違いない。
(今でも現に著者の海部さんや解説の梅田さんら今の日本に新しいビジョンを提示している優秀な方々はシリコンバレーに流れて行ってしまっているけれど…)