ベトナム旅と司馬遼太郎と近藤紘一
旅に本はつきもの。
今回もベトナム絡みの本を買ってみた。
ひとつは司馬遼太郎の『人間の集団について』
- 作者: 司馬遼太郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1996/09/18
- メディア: 文庫
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もうひとつは近藤紘一の『サイゴンから来た妻と娘』
- 作者: 近藤紘一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1981/07/25
- メディア: 文庫
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渡航前に司馬遼太郎の本を、ベトナム滞在中に近藤紘一の本を読んだ。
2冊とも私が産まれる前に書かれた本で、ちょっと古く、当時のサイゴンを舞台に書かれてる。
司馬さんのベトナム訪問を手助けしたのが当時産経新聞のサイゴン支局長をしてた近藤さんだと言うから、ほぼ同年代の話。
でも、数日滞在した司馬さんとベトナム人の奥さんと共に暮らした近藤さんの視たベトナムは結構違う。
どちらかと言うと歴史家の司馬さんはマクロな視点、新聞記者の近藤さんはミクロな視点。
例えば、司馬さんの著作の中で印象的だったのは、「韓国とベトナムが歴史も地理的環境も酷似している」と言う事。
地理的に隣接する中国からの侵略と支配を受け続け、国家体制を中国式にせざる得なかった悲運を両国は共有してる。
ただ、悲しい事にその2つの国の交流の端緒が、ベトナム戦争で米軍の要請で派兵された強靭な韓国兵による殺戮行為であった事。
私も2004年に韓国に行くまでベトナム戦争に韓国が関わっていた事を知らなかった。
司馬さんはベトナムを訪れた時に韓国人に間違われて「ダイハーン(韓国人が大韓と名乗った事が語源らしい)」と罵声を浴びたそうだ。
だから、私も『Are you Korean?』と尋ねられると思い出して少し緊張した。
いまは韓国人観光客も多くて、そんな罵ったりする事もないみたいだけれどね。
(実際、ベトナムで韓国人の観光客の子と友達になったし ^^)
それでも、自国の正義の為にベトナムで戦い、ベトナムの人々に憎まれた韓国兵に哀れみを感じながら、司馬さんの言った言葉は強烈に残りました。
集団のもつ正義が強烈であればあるほど人間は「食べて、寝て、愛する」という素朴な幸福から遠ざかるものらしい。
ムイネーの海辺で読んだ近藤さんの本はベトナム人の奥さんを中心にカルチャーギャップをコミカルに描いていて面白かった。
戦争という時代背景を強く感じさせないのは、ベトナム人にとって長年続く戦争が日常になってしまったからだと思う。
ベトナム人の食べ物に対するこだわり、豊かな食物の恵み、かかあ天下っぷり、素敵な笑顔、厳しい教育方針、自然を受け入れた暮らし方…たくさんの逸話からベトナムの空気が伝わって来た。
読後にフォーを食べた時は、ベトナム人に倣って自分も独自の好みの味を見つけなきゃって思ったり。笑
訪れた旧大統領官邸では、北ベトナム軍が入城したシーンを思い描こうとしたけど、道路はたくさんのバイクが溢れてて、加藤さんの描いた緊迫感からは程遠かった。
でもそれが、それから30年以上経った証なんだろな